食べるフードを探すことを超える特効薬③ 逆を知ることで生まれた広がり
このお話は連載です。前のお話はこちら
見えなくなっていた目の前の事実
実体のない私の不安とは違い、目の前には歴然とした事実がありました。
うちの子はフードは美味しくないので食欲が湧かず食べる気がせず、食材を調理したトッピングや手作りごはんの方が美味しかったし食欲も出たのです。
健康な状態を保つことや、病状を悪化させないことを考えたら、この事実の方がずっとずっと優先して尊重すべき大切なことでした。
きっと、ずっと前からそうだったのだろうと思います。
私の理想やこだわりなんて本当にちっぽけなものなのに、目の前の事実よりも自分の想いの方を優先してしまい、まだ食べることができた時期にお腹いっぱい美味しいものを食べさせてあげることができませんでした。
最期の頃、蒸かしたお芋を美味しそうに食べていました。
もっと早くに自分の怖れと向き合い、自分のこだわりや正しさを手放していたなら・・・
自分の握りしめた理想像(信念)よりも、実際に起きている事実に目を向けることができなかったばかりに、上っ面の「愛犬のため」を守ることにばかり目を向けて、愛犬ための最善を見失ってしまいました。
自分の信念の枠の外への1歩
私は愛犬が亡くなった後、縁あって2頭目の愛犬を迎えることができました。
どういうわけか、その子もまたフードを食べない子犬で・・・(笑)
とにかく与えた時にきちんと食べるしつけだけはしておかなければと取り組んだおかげで次第に改善の兆しが見え始め、BSKフードが今のレシピに変わったこともあってだいぶ安定しました。
先代犬のために買った栄養分析表はなかなか興味深くて時折眺めていたのですが、ある時ふと、本屋さんで手作り食についての本を探して読んでみることにしたのです。
実家でのいい加減すぎる犬飯の反動もあり、手作りなんて過去の時代のことで自分には関係のないことだとずっと思っていました。
またこの頃は、手作りと言えば生食(生の肉などを与える)が主流で異端なイメージがあったのと、彼らは彼らでドッグフードを否定していたので余計に抵抗感がありました。
しかし私が手にした手作り食の本には、ドッグフードだけでは得られにくい健康メリットがあることはもちろん、生食でも加熱してもどちらでも問題ないということや、手作りだからと言って栄養バランスが崩れてしまうこともないこと、どのように始めるのがいいかなどがとても分かりやすく書かれていました。
その偏りのなさに何となく心惹かれるものがあり、知ってみれば実態はそれほど理解できないことでも取り入れられないものでもありませんでした。
私は今まで何も知らなかったくせに、必要ないと思い込んだり、否定的な感情を抱いていただけだったんですね。
手作り食を学ぶことで得たもの
それからいろんなタイミングが重なって、ペット事業者向けにペットの食育インストラクターの資格講座が開講されることを知り受講することにしました。
もちろん手作り食を基礎から学ぶことができ、食事と体の仕組みの関係性、インストラクターとしてのセミナー活動の仕方などもみっちり学びましたが、私にとってそこで学んだ一番の収穫は、
- ドッグフードでも手作り食でも、どちらにもそれぞれメリットデメリットがあり、どちらがより優れているのではないということ。(そしてそれは愛犬の食事に限ることではなくどんなことにもいえること)
- どんなことにおいても情報を得る時には偏りなく、双方向の言い分を広く得るようにすること(情報の出どころ、信憑性も重要)
- その時によって柔軟に対応できる力を養うこと
など、食に対する基本的な姿勢や人としての在り方でした。
これまで頑なに信じていたことは、思えばそのほとんどが一般飼い主同士の噂話の域を出ないものや専門的な栄養知識を持つわけではない獣医師による話の寄せ集めで、信憑性に疑問が残る偏った情報によるものでした。
情報の基盤がぐらついているので、どうしても漠然とした不安に駆られてしまいます。
すると逆に何かにすがるように信じたものを正当化したくなる。
そうやって、ちょっと考えれば当たり前のことすら疑問を抱けなくなっていたことに気付かされ、目からウロコの連続でした。
―――――――――― 続きます
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