愛犬におやつは必要?
犬のおやつは愛犬が喜ぶ姿を見たいという飼い主さんの想いをつかんで、今では犬を飼う時に必要なものの定番となりました。
愛犬のおやつはどんなものを選ぶといいですかというご質問を頂くこともあります。
でもBSKでは愛犬の健康を考えた時にそもそも犬におやつは必要かな?ということも考えてほしいと思っています。
今回は愛犬のおやつについて様々な視点から考えてみたいと思います。
犬のおやつの歴史
日本では1960年代頃にドッグフードが販売され始めたそうですが、思い返すと1980年代初めの頃はまだ手作り食(残飯)を与えていた家庭も多かったように思います。
当時はおやつと言えばオモチャ感覚での牛皮製のガムが主流で、それからジャーキー類が販売されるようになり「犬のおやつ」という概念が広まっていきました。
その後のシベリアンハスキーやゴールデンレトリーバー等の大型犬ブームによって、それまで警察犬訓練所等特定の施設で行われてきた犬の訓練が、一般家庭にも愛犬のしつけとして浸透、スパルタではないおやつを使ったトレーニングによっておやつは多様化し定着したように思います。
このようにしてみると犬のおやつはドッグフード以外の何かを売って利益を得たいというペット業界側の思惑によって誕生し大成功したビジネスモデルという側面もあります。
庭先に繋がれた番犬だった犬が室内で共に暮らす家族の一員に変わり、愛犬を子どものようにかわいがる愛犬家にとっておやつを与えることは楽しみのひとつとなりました。
小さな子どもにおやつを食べさせることと近い感覚で必要なものと思ってしまうのも無理はありません。
しかしおやつを与える習慣を作らなくとも子犬はすくすくと育ちますし、最初からおやつがなければそういうものだと受け入れてねだることもありませんし、家計にも優しいです。
おやつを与える目的 人と犬との違い
さて、おやつというのは愛犬にとってどのようなものなのかを考えるのに人間の子どものおやつを比較してみたいと思います。
人間の場合、幼児期のおやつには明確な目的があります。
- 食事で取り切れない栄養の補足のため
- 次の食事の時間までエネルギーを持たせるため
- 気分転換のため
など、本来子どもの成長にとって必要なものとして位置付けされています。
犬たちはどうでしょうか?
- 愛犬たちは多くの場合総合栄養食のドッグフードを食べています。栄養の補助という目的でおやつを与える必要はありません。
- 本来持っている運動能力のポテンシャルを使う機会がない室内飼いの犬たちは肥満傾向であることも多く、次の食事までエネルギーを持たせるといった必要はないでしょう。
- 小さな子どもがお気に入りのおやつでぐずりが解消するというようなことを、イタズラ・無駄吠えの愛犬にも行うわけにはいきませんよね。
もう成長のために栄養を必要とするわけでもない愛犬にとっては健康的な育成という意味でのおやつは必要ないといえるでしょう。
愛犬のおやつが原因だった様々な問題
健康的な育成のために必要ないばかりか、おやつには困った点がいくつかあり飼い主さんの悩みの原因になっている場合もあります。
偏食・少食
ドッグフードを少ししか食べない、好き嫌いが多くて困っているとお悩みの飼い主さんによく話を聞くと、おやつを与えているケースが多いです。
特に小型犬の場合、一日のドッグフードの給与量が100g程度であるにもかかわらず、おやつを数個食べさせていたらお腹も減らず肝心な主食が入らないことにもなりかねません。
おやつは各社の販売競争でより嗜好性が高く購買されやすいものがどんどん発売されています。
犬としては毎日同じドッグフードよりも、おいしくて飼い主さんが手渡ししてくれるおやつの方がずっと魅力的で、それでお腹がいっぱいになるならそっちの方がいいと思ってしまうでしょう。
なかなか治らない皮膚病
ドッグフードをこだわって選ぶ飼い主さんが増えましたが、意外とおやつは盲点だったりするようです。
オヤツをやめたらなかなか治らなかった皮膚トラブルが改善することがよくあります。
油分が多く酸化やすかったり、体に合わない添加物が含まれていたりすることもあり、老廃物がうまく外に出せず皮膚トラブルとして出てしまうケースがあるようです。
またガムのような長く噛んで遊ぶタイプのおやつは不衛生になりやすく雑菌が繁殖して口の周りに頑固なできものができることがあります。
トレーニングの失敗
実はおやつを使ったトレーニングがうまくいかずBSKを訪れる方がかなりいらっしゃいます。
簡単に誰でもできるということでご褒美におやつを与える犬のしつけが広まりましたが、間違った学習を進めてしまう場合もあります。
行動を肯定することを伝える意味での「ご褒美・報酬」はトレーニングにおいて必要ですが、正しく伝えるということは言葉の通じない相手に簡単なことではありません。
残念ながら人と犬とをよく見て理解して指導してくれるドッグトレーナーが少ないというのが現状かと思います。
ご相談の飼い主さんのお話を聞くと、飼い主さんの心理的にもおやつがないということを聞かせなれないというおやつ依存を生み、犬はおやつが欲しいだけでうまく伝わっていないということが起こりがちだと感じます。
本来トレーニングというのは芸ではありません。
日頃の信頼関係の構築であり、もしもの時に安全にストレスなく生活の質を保てることが目的です。
また、オヤツを使ったトレーニングのせいでおやつの与えすぎで食事を食べない・肥満が進むなど健康上の問題も起こりやすくなります。
BSKではおやつではなく褒めることをご褒美とした楽しいトレーニングを学んでいただいています。
おやつを与える時の工夫
こうしてみると愛犬のおやつは健康上必要なものではなく、あくまで飼い主さんの娯楽という要素が大きいと思います。
とはいっても、やっぱりおやつを与えたいという方も多いと思いますし、必要ないものは絶対ダメではなくマイナスにならない工夫を考えてみることも大切だと思います。
おやつを与えるタイミング
しっかり主食を食べてもらうことが第一です。
ごはんをちゃんと食べたらおやつを与えるなど、おやつでお腹いっぱいで肝心の食事が食べられないということがないようにしましょう。
食事量とおやつのバランスチェック
特に食いしん坊で肥満傾向の犬にはできればおやつは与えない方がいいですが、それでもおやつを与えたい時もあると思います。
おやつを毎日の習慣にするのではなく、おやつを与えた日はその分食事量を少なくするようにしてください。
必然的に栄養量・バランスが崩れますのでくれぐれもおやつを与えすぎてしまわないようにセーブすることが大切です。
おやつの質にもこだわる
残念なことにこれだけ人気だと品質にも大きく差があり、犬たちの健康よりも売れるもの・利益が出るものがべースとなった商品もあります。
「無添加」と書いてあるだけで選ばずに、原材料の欄を見てどんなものが使われているのかチェックしてみたり、よくわからないものがあったら調べてみるのもいいと思います。
原材料として使われていなくても製造過程で有害な薬品が使われていたりする場合もありますので、BSKでは原材料へのこだわりだけでなくできる限り加工工程を確認、信頼できるおやつだけを取り扱っています。
しっかり運動
おやつを与えることの弊害の多くは実は十分な運動によって解決できることがほとんどです。
少食・偏食は運動によってカロリー消費量を上げることで改善できるケースが多いですし、皮膚トラブルも運動によって血流やリンパの流れが改善、摂取水分量も増えて老廃物が出せる体質になりやすくなります。
とにかく犬にとって十分な運動は健康であるための万薬です。
上手におやつと付き合おう
前半はおやつの問題点についていろいろとお話しましたが、では存在悪だからいらないというような0か100かという話ではないと思います。
実際においしそうにおやつを食べる愛犬との時間にホッとして一層愛おしくなる方がたくさんいるからこそこれほどまでに支持され続けているのだと思います。
愛犬の健康のことを第一に考えて上手におやつと付き合えるように、今回の記事が参考なれば幸いです。
BSKでもおやつを取り扱っております。
これまで本当に犬のためを思って安全なおやつを作る小規模の会社とのご縁がもっとあったのですが、ほとんどがペット業界から撤退、倒産などに見舞われて取り扱いがかなり少なくなってしまいました・・・。